Scene プロフェッショナル 佐久間正巳氏

KURE5-56を愛用されている各界のプロフェッショナルが語る「Scene」。
今回は、宮内庁御用達の傘を手がける洋傘の名店「前原光榮商店」の三代目、前原慎史さんです。

「雨の日が待ち遠しくなる傘。
それが前原光榮商店の信条です」

一般的な傘は8本骨が多いのですが、前原光榮商店の傘は16本骨が中心です。
それは、もともと前原光榮商店の創業者である祖父が作っていたものを2代目の父が復刻し、そして現在まで作り継がれているものです。
実は、ここには前原光榮商店の傘作りの想いが込められています。
16本骨は風に強いと同時に、開いた時の傘のシルエットが美しいのです。つまり実用性とデザイン性、その両方を兼ね備えた傘、言うなれば「使うことも、持つことも楽しくなる傘」それが前原光榮商店らしい傘だと言えます。

昭和23年に独立して前原光榮商店を始めた祖父は「雨の日が待ち遠しくなる傘」が信条だったと聞いています。
戦後の混乱した物のない時代、それでも祖父は本当にお客さまに満足していただける傘を作りたいという思いで、職人たちの熟練した技を結集して細部にまでこだわった傘作りをしていました。

使い勝手はもちろんのこと、デザインも、手触りも、そしてお使いになる方の姿まで意識して作ることで、本当に「雨の日が待ち遠しくなる傘」が生まれるのだと思います。

「職人一人一人のこだわりが注ぎ込まれて
1本の傘が生まれます」

私たちが作る傘は1本の傘に最低4人の職人が関わっています。生地を織る職人、骨を組む職人、手元を作る職人、そして生地を裁断し縫製する職人。4つの分野の職人は、例えれば「傘」という文字に含まれている4つの「人」の文字とも言えます。

生地は傘生地製造で長い歴史を持つ山梨の工房で、甲斐織物の職人が伝統的な機(はた)を駆使して作っています。優れた職人が織った生地には、糸切れ部分の傷が無く、効率よく美しい傘に仕上げることができます。

骨の中心となる中棒の部分は、ほとんどの場合樫の木で作っていますが、傘の開閉を左右する大切な部分ですので、いかに真っ直ぐに造り上げるかが重要になってきます。作業としては角材から少しずつ削ってさらに熱を加えて真っ直ぐにするのですが、優れた職人は元の材料から木目を読み、より高い仕上がりを目指します。

手元と呼ばれるハンドル部分は、持ち手の感触や持ちやすさも大切ですが、さまざまな材質の良さを引き出してデザイン的な面白さを演出することも重要です。そのため多様な材質に対応した「曲げ」の技術は、ある意味秘伝となっており、職人一人一人が長年の経験から生み出した技を持っています。

最終的に揃った部材を1本の傘に仕上げていくのが加工職人です。加工は生地を傘に合わせて裁断することから始まりますが、この時の正確さが仕上がりの美しさに大きく影響します。大量生産ですと8枚、10枚と重ねて裁断するところを前原光栄商店では4枚重ねで裁断。裁断に用いる三角形の木型も職人一人一人が自ら調整したものを使って裁断します。

「KURE 5-56は、
前原光榮商店の信頼を支えてくれています」

前原光榮商店の傘が皇室御用達になったきっかけも、老舗の大手百貨店に専用売り場を持てるようになったのも、実はその発端は傘の修理依頼をお受けしたことにあります。

長く愛用していただくということを創業以来の信条としている前原光榮商店にとって、修理は単なるアフターケアではなく、お客さまと心を通じる大切な作業のひとつと考えて社員が自ら1本1本行っています。

その修理作業の重要な一端を担っているのがKURE 5-56です。
主に金具の部分の動きをよくするためにKURE 5-56を使うのですが、例えば折りたたみ傘の金具の部分に使った場合、潤滑剤が金具に多く付着していると布を張った時に布に染み込む心配があります。

その点KURE 5-56は浸透性が高いので、僅かな量を使うだけで大きな効果があり、グリスのような粘度もありませんから、余計な汚れが付いて仕上がりが汚くなることもありません。

もともとKURE 5-56の効果の1つとして水置換効果があるので、傘との相性はいいのかもしれません。

修理をしている期間は、お客さまに不便をお掛けするわけですから一日も早く仕上げてお返ししたいわけです。そういう意味でもKURE 5-56を使うことで、滑らかな動きだけでなく、早く美しく修理を進められるのでとても助かっています。

「職人の意気込みやこだわりを感じてもらえる
商品を提供し続けたいです」

前原光榮商店の傘の誇りはその完成度もありますが、製品自体にそれを作った人々の意気込みやこだわりが満ちているところでもあると思っています。職人の卓越した技術や徹底したこだわりをお客さまに感じていただける商品を、この先もずっと提供していきたいと考えています。

そのためにも、若い世代の職人が一人でも多く育ってくれることを願っていますし、私自身もそのために努力していきたいと思っています。

前原光榮商店もまだ70年ほどの若い傘屋です。しっかりとした昔ながらの技術を背景に、いつの時代にもお客さまに満足していただける傘作りをしていきたいと思います。

Profile

前原 慎史(まえはら しんじ)
1973年 東京都出身
1997年(株)前原光榮商店入社。同年9月、同社代表取締役就任。